第8回「読書交歓会」レポート

7月18日(土)に第8回読書交歓会を開催しました。
テーマは、7月ということで「夏」です。
今回は男性4人、女性3人の合計7人で行いました。
内容は哲学書から海外文学、ホラー小説まで色々なジャンルの本の紹介がありました!

それでは、今回の交歓本はこちら~

●不条理!夏の定番のカミュ!(哲学大好き男性)
◆『異邦人』アルベール・カミュ著 窪田啓作訳 新潮社 ¥460(税別)
主人公は母の死の翌日海水浴に行き、女と関係を結び、映画をみて笑いころげ、友人の女出入りに関係して人を殺害し、動機について「太陽のせい」と答える。判決は死刑であったが、自分は幸福であると確信し、処刑の日に大勢の見物人が憎悪の叫びをあげて迎えてくれることだけを望む。
海で海水浴をしているシーンが印象的。欧米人は理解できるかもしれないけれど、日本人にこの感覚はわからない。何故こんなことをしたのかわからないのが斬新?
カミュはサルトルと交流がある。サルトルは実存主義。人間はきちんとした動機が無く生きている?「異邦人」も起こったことに対して決まった態度を示さないとそのグループの中ではストレンジャー。「悲しい」とかの感情がなかった。主人公は自分の感情に正直すぎた。だから死刑になったのでは?お悔みに対する礼儀を持ち合わせていない「異邦人」だった。読んでいて苦痛だったという意見。実存主義から入らないとわからないと思う。
「異邦人」でノーベル賞作家に。サルトルとの論争に負けて去った。カミュはなんとハンフリー・ボガート似のイケメンだった!?

●さわやか系の本を紹介!(活字中毒の男性)
◆『夏のくじら』大崎梢 文藝春秋 ¥667(税別)
東京から高知の大学へ進んだ少年。従弟に誘われ、よさこい祭りに参加。少年が高知大学を選んだのには目的がある。それが徐々にわかってくる。とにかく高知の人のよさこいにかける熱さが尋常ではない!その熱さが描かれている!高知の人はこのよさこい祭りのために1年働いているのではないかと思うくらいに凄い!さらに恋模様も描かれた青春小説。
◆『海のふた』よしもとばなな 中央公論新社 ¥495(税別)
個人的に言えば、よしもとばななはこれさえ読めばよい!?海辺の街でかき氷専門店を始めた女の子のところへ、お母さんの友だちの娘と言う若い女の子が訪ねてきた。そしてひと夏を一緒に過ごすことになる。ささやかながら丁寧な生活を描いている。読前と読後とでは世界が違って見える。日々を丁寧に生きてゆくことがいかに大切なことかがわかる。
ひどく疲れた時に読むと癒される・・・。(女子たちが読みたいとの声!)
菊池亜希子主演で映画化。7月14日から公開です。(残念、山陰では上映なし。)
◆『聖なる怠け者の冒険』森見登美彦 朝日新聞出版 ¥1,600(税別)
◆『宵山万華鏡』森見登美彦 集英社 ¥480(税別)
『聖なる怠け者の冒険』は本屋大賞にノミネートされた。「有頂天家族」と関連している。
朝日新聞連載とまったく違う話にしている。物語は、祇園祭の日、京都に出没し困っている人に手を差し伸べる正義の怪人・ぽんぽこ仮面。京都を牛耳る闇の勢力や神様等がからみ大騒動になる!というお話。非常に面白かった!
『宵山万華鏡』も京都の祇園祭が舞台!ユーモラスな文体がちょっと影をひそめている。一つの事件を二つの視点で描いてある。一面から見ると普通のこと、別の面からみるとホラーになっている。ホラー的要素がつまった恐怖譚。短編集。

●夏にぴったり。子どもと一緒に楽しめる絵本(絵本好き女性)
◆『昆虫とあそぼう』とだこうしろう 戸田デザイン研究室 ¥1,300(税別)
イラストがとても可愛い!子どもに見せると心に残る。子どもには良い印象が残ると思う。
中身のイラストはわりとしっかり描きこんであり、とてもリアル。眼を惹く。文章が非常に良くて、大人が読んでも面白い。そしてとても肯定的。夏の虫とりに関したことが中心に描かれている。虫の大きさとかもきちんと表してあり、(イラストの可愛さに女子が騒ぐ!)大人も子ども楽しめる、さらにお役立ち!の絵本。

●ちょっと変わり種の夏の本!(色々読んでみています・・女性)
◆『夏子の冒険』三島由紀夫 角川書店 ¥520(税別)
三島由紀夫のラブコメ!?美しくて、男性にモテモテの夏子。色々な男性から求婚されるが、なびかない。ハードルを上げて男性を試すがまったくだめ。デートに誘うけど家にすぐに送るような男性はダメとか・・・本物の情熱のある人と結婚したい。でも見つからないから修道院への旅に!だがその途中、運命の人と出会ってしまう!情熱がある男性だが、この男性の人生には熊が大きく関わっていて、熊を退治しないと前にすすめない!ワクワクドキドキの展開が面白い!昭和35年に描かれた三島由紀夫の珍しいラブコメ作品。
◆『僕たちの戦争』荻原浩 双葉社 ¥781(税別)
楽観的でチャラいフリーターの男の子が、終戦間近の日本にタイムスリップしてしまう。現代の少年と、当時命をかけて戦っていた少年が入れ替わってしまう。現代にタイムスリップした少年は、あまりに変り果てた日本に嘆く。自分たちが命を掛けて守った日本はこんな姿になっていた!戦争中の時代へタイムスリップした男の子にはガールフレンドがいたが、現代にきた少年も彼女を好きなってしまう。ラブストーリーでもあるし、戦争中の事も描いてあり、さらに現代の日本が抱える問題にも焦点をあてている。色々な事を考えさせられるけれど、ちょっと笑えるところもあり、泣けるとこもある。本当に大事なものって何?と思わせる小説。とても面白かった。ドラマにもなっています。森山未来と上野樹里が好演!
◆『天使はモップを持って』近藤史恵 文藝春秋 ¥657(税別)
「エール」というお仕事短編の中に近藤さん作品が面白かったので・・・。ギャル風女子が会社を綺麗にする。掃除の天才のギャルがオフィス内の事件を解決するミステリー。主人公の男の子・梶本くんが天才掃除ギャル・きりこちゃんに相談してゆく。きちんと綺麗にするのは大事だな。きりこちゃんがいつも露出度の高い服を着ているので、夏のイメージがあります。北乃きいが主演でドラマ化されている。

●ホラーしかありません!(ミステリー好き 女性)
◆『祝山』加門七海 光文社 ¥540(税別)
廃墟に肝試しに行ってから友人の様子がおかしくなったので、相談にのって欲しいとの連絡を受けた、ホラー作家。嫌な気持ちを抱きながら話を聞くと、とんでもないことになっていた。友人がだんだんおかしくなっていく過程が怖い。「祝山」の由来が超恐い!著者の加門七海の経験談が小説になっている、ドキュメンタリタッチのホラー。軽い気持ちで廃墟の肝試しなんか絶対にダメだと思った。あまりに怖いので、家においておけない。
◆『緋(あか)い記憶』高橋克彦 文藝春秋 ¥543
記憶に関わるホラー短編集。行ったことのない場所なのに妙に懐かしい感じがする。そこは子供の頃に住んでいた場所だった!とか、思い出してはいけない記憶をあることがきっかけで思い出してしまった!自分がとんでもないことをしでかしていた!など、思い出したら恐怖にとらわれるような記憶の数々の物語。人と同じことをしていたはずなのに、記憶が全く違うことってよくあるけれど、封印した時の記憶が甦る瞬間が怖かった。
怖すぎて、おススメしても読めないですよね?
◆『昭和16年の夏の敗戦』猪瀬直樹 中央公論新社 ¥648(税別)
太平洋戦争直前の昭和16年の夏に当時の最高位の頭脳集団が、アメリカとの戦争をシュミレーションしてみた。どのような戦略をたててもアメリカに勝つことが出来なかった!それがわかっていながら、なぜアメリカと戦争を始めたのか?が書いてある。途中までしか読めなかったけど・・・。日本は、色々な場所を占領して、そこから物資を調達すれば良いという考えで、兵站(後方支援・物資の補給)の重要性を軽視したため負けたとの説もある。海軍と陸軍の意見の相違、神風が吹くと信じていた!?

●さわやか青春小説!(交歓会初参加の若い男性)
◆『サマーバケーション EP』古川日出男 角川書店 ¥667(税悦)
吉祥寺と月島が一本の川で繋がっているというところから。顔が認証できない障がいをもつ青年が吉祥寺に遊びにきた。そこで出会った青年と出逢い海まで繋がっているらしいよ、ということで、30キロの道程を散歩しようとすることから始まる。その途中で色々な人が現れて一緒に歩き、また別れる。ちょっと変わったイギリス人カップル、中学生集団などが加わってきて面白い。とても良かった。古川さんの本はリズムがあって好きです。東京の街並みもきちんと描いてあるし、実際の道が描かれている。スーパー銭湯とかも出てくる。恩田陸の『夜のピクニック』も夜、延々歩くお話。長い道のりを歩く話は実際に結構あるよね。

●タイトルに『夏』が入っているミステリー(ミステリー好き男性)
◆『消えない夏に僕らはいる』水生大海 新潮社 ¥630(税別)
人が死なないミステリー。島田荘司主催の福山ばらの街ミステリーでデビュー。
臨海学校に行った小学生4人組。そこで少女と出会う。そこでちょっとした事件が起こる。
高校生になり、その5人が偶然一緒になる。5人それぞれの視点で描いてあり、誰かしらに共感できると思う。そのあたりがとても面白かった。
メフィスト賞作家はデビュー作が最高傑作!?

今回も色々な本の紹介がありました。脇道にそれた話も結構面白かった!
山手線一周は35キロ、シルクロードを歩いた人は一日平均40キロ歩いたなど・・・。
やはり紹介した本だけでなく、周辺のおススメ本の話もどんどん出ました!
次回の読書交歓会は11月頃の予定です!

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